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親愛なるウィンリィ・ロックベル様 お元気ですか? 少し久しぶりの手紙になりますが、ぼくと兄さんは、今、北部の町に来ています。大昔の賢者のうわさ話を聞いて、その足跡をたどっている途中です。成果の方はというと、例によってまだ何とも言えないとしか書くことがないのだけれど……。 それはさておき、北だけあってまだ十月に入ったばかりなのにもう雪が降るんじゃないかってくらい寒いんだって! そのせいか、町のあちこちで毛織物屋を見かけます。特産品なんだと思う。同梱した荷物がそれ。帽子とマフラーと手袋はウィンリィに、ショールはばっちゃんにだよ。リゼンブールじゃまだ要らないかも知れないけど、寒くなったら使ってみてね。とっても暖かいらしい。兄さんが言うんだから間違いないよ。 そうだ、兄さんといえば急に寒いところに来たせいか、ちょっと風邪気味みたい。鼻水垂らしてぐずぐず言わせてたから、今朝は本を取り上げて部屋に監禁してあります。(だから落ち着いて手紙を書けているとも……) 無理をするのも相変わらずで、ぼくはいつも小言ばかり言ってるような気がする。今度、ウィンリィからもガツンと言ってやってよ! ご飯は三食摂れとか、夜はきちんと寝ろとか。ぼくがあんまり言うと逆効果みたいだから。……まるで、きちんと生きるのが怖いみたいで、とても心配なんだ。 あぁ、けどそういえば、先日東方司令部に寄ったとき、少し嬉しく思ったことがありました。軍の話なんだけどちょっと聞いてください。 この間行ったらね、司令部に市長さんの息子さんが『社会科見学』で来てたみたいで、廊下でばったり行き会ったんだ。顔見知りの少尉さんが引率してて、挨拶だけして通り過ぎようとしたんだけどね……。ほら、兄さん、どこでもいつでもあの態度でしょ。市長さんの息子さん、ぼくらと同じくらいの歳の子だったんだけど……なんていうか、ちょっと、えーっと、感に障ったみたいで………兄さんに言っちゃいけないあの言葉、言っちゃったんだよ。 そしたらさ、兄さんったら何したと思う? ぼく、心底呆れたね。笑ってすませておけばいいのに、「俺に喧嘩売ろうなんざ、十年早い!」って言ったかと思ったら、もう足が出てたんだよ! 手が出るならまだわかるけどさ、なんで足からなのかな兄さんって。 またその子がわんわん泣いてパパに言いつけてやる、なんて言うもんだから、兄さんがますます怒ってもう大変だったんだから。まるっきり子どもの喧嘩。っていうか、まさにそうなんだけど。 市長さんそのものじゃなくて息子さんだったし、軍属とはいえ軍人じゃなかったし、ふたりとも未成年だからってことで、その場は喧嘩両成敗で軍と議会の対立問題にまでは発展しないように収めてもらったんだけど、大騒ぎは大騒ぎで、ぼくまで怒られちゃうし、散々な目に遭いました。 で、それがどうして嬉しいことになるのかというと、この騒ぎの間にわかったことがひとつあって―― |