*** たぶんきっと犬も食わないそんな話
じゃあまたあした、と振られた右手をコンマ数秒長く眺めて(こりゃ分かってやってんなぁ)と内心苦笑する。
この親友は面倒くさがりなのが玉に瑕だ。
傍らに並び立つもうひとりが気の毒で視線をやれば、すんげぇ不機嫌な表情で無言のままにうるせぇと怒られた。
手の出しようもなくて、そりゃあさぞかしもどかしかろう。そんなに胃の痛そうな顔をするくらいなら我慢なぞせず、抱きかかえてでも保健室まで強制連行しちまえばいいのに。とは思うものの、それができないからこその甘えなのだろう。見える場所では不服すら表に上らせないから、ますますだ。
こうなると気になるのは、甘えられている側がどこまで解っているかってぇことだったが――余計な気遣いはたぶんきっと犬も食わない類の話。
二秒あまりで思索をここまで巡らせて、結局やっぱり同じように、また明日な! とニカッと笑って帰るふたりを見送った。