*** どうしたって10代目がいいんです(17.10代目)
そうだよ、父さんがいるじゃん! 父さんがやればいいんだ。
腑に落ちた、スッキリしたと言わんばかりの輝かしい顔で、主はきっぱりと断言した。
どうして思いつかなかったんだろ、ねぇ! と話を振られて、はい、とは答えられなかった。
なんのことかはわかっていたけれど、理解の悪いふりで「なにをですか?」と首を傾げたら、怖い顔で睨まれた。
いいよ、おれ、今からリボーンにねじ込んでくるから。と言われる凛々しいお姿に至っては(失礼ながら)ダメツナの片鱗など欠片もなかった。
「だ、だだだだめです、10代目!」
慌てて押しとどめたら、「わかってるんじゃんか」となお怒られた。
「何がダメ」
主が自分にぶすくれた顔をお見せになるのは珍しい。たいてい、お父様やお母様、おっかない家庭教師様を挟んで議論になったときくらいだ。(そのほかのことには俺が異見などしないからだろう)
「えーっと、そのですね…、あー……」
不肖獄寺隼人、これでも一応ボンゴレの右腕を目指すものとして、そのあたりは確認済みだ。が。
「じゅーいちだいめじゃ、語呂が悪いです!」
その経緯は俺なんかからお話できるようなことじゃなくて。
苦し紛れの言い訳は、たぶん、あまりにもどうでもいい理由過ぎたのだろう。10代目はたっぷり十五秒は絶句したあと、「獄寺君はなにがなんでも『じゅうだいめ』なんだね」と、がっくりと肩の力を落とされた。
「え、そ、それはもちろん、10代目が11代目でも15代目でも20代目でも、10代目にはお変わりないのですが!」
沢田綱吉さんが沢田綱吉さんであれば、肩書きがどう変わろうとも主と仰ぐに否やはない。
握りこぶしまで作って真剣にお伝えしたのに、10代目は疲れたお顔で「もーいいよ」と俺から視線を外されてしまった。