飛び込んだ電話ボックスは当然、ひどくなまぬるく湿気ていた。
「ひゃー、ひどい目にあった!」
それでもひとまずは屋根を得たことで綱吉は両手で顔をぬぐって笑顔を見せた。
「ついさっきまで晴れてたのにさー」
間に合わなかったねぇと今度は水の滴る髪を乱暴にしぼった。ぬぐって差し上げたくても、もちろん獄寺だって水浸しで、手の出しようもない。
雨脚はますます強く、薄い箱の屋根を打つように叩いている。
「すみません、10代目……」
「へ」
「オレがもう少し」
早く、と続けるはずが、下からねめつける眼光の強さに押しとどめられる。
「そもそも補習で足止めを食ったのはオレだよ」
そんなことは全然、とも、言わせてもらえなかった。もごもごと口ごもった獄寺に目じりを緩めて許しを与えて、「これ、晩メシまでに止むかなぁ」とだだ降る外に視線を外した。
雨だれは間断なく、目の前にあるはずの滑り台さえ霞んでいる。
だばだばだばと品のない轟音が沈黙を埋める。
じわりとした空気に少しずつ冷気が忍び寄り、唐突にすぐそこにある熱源を意識する。いつもふわふわと自由に跳ねている髪は今ばかりはしんなりと頭蓋のままに流れていたが、むしろかえって姿のよさを主張しているようだった。
身じろげば触れる。そんな距離。
止んでほしいような、止んでほしくないような。奇妙な緊張感の中にいる獄寺のことなんて、
「すごいなー」
ほとんど影しか映っていないガラスに両手をつけてなんとか雲の様子をうかがおうとしている綱吉はちっとも気づかない。
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